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 カーナビにも受信料
2017年2月20日号

カーナビにも受信料

NHK

 西日本の複数の物流会社に対し、保有する車両に搭載するテレビ付きカーナビを含めた、事業所にある全てのテレビの台数を報告するよう求める内容の書面が、NHK(上田良一会長、東京都渋谷区)の地域営業センターから郵送されていることが分かった。総務大臣が認可した受信料に関する規約では、事業所の場合、事業所内の部屋や保有自動車1台ごとの受信契約締結を求めており、自動車運送事業の業態では保有台数に比例した高額な受信料が請求される可能性もある。NHKによると、契約のあるカーナビの総台数は把握できておらず、「一般常識上、カーナビに付いたテレビの受信料を払えるはずがない」と反発する物流会社などへの説得材料を提供できているとは言い難い状況だ。

管内事業所に設置状況表を送付

 「休憩室のテレビの受信料はまだ理解できる。しかし、運行補助のために導入したカーナビに付いているテレビにまで、本当に受信料を払わなくてはいけないのか」。西日本の物流会社からそうした疑問の声が本紙に入った。
 「放送受信契約適正化のお願い」――。この物流会社を管轄するNHKの地域営業センター長名の書面が届いたのは今月上旬だった。書面には、「国会審議や会計検査院検査で、事業所等に設置するテレビの放送受信契約の状況について指摘を受けた」とする内容が記されている。また、同封された「テレビ等受信機設置状況調査表」は、事務室、会議室、休憩室など事業所内の部屋ごとにテレビが何台あるかを記載する一覧表になっており、その中に「業務用車両(TV付きカーナビ)」の台数を記載する欄もある。記載後の調査票は、ファクスなどで地域営業センターに返信するよう求めている。別紙には「営業車等に搭載のテレビ付きナビゲーション(カーナビ)も契約対象となります」と明記される。
 物流会社は、「何十年と、この場所で会社をやってきたが、こんな文面を見るのは初めて」「カーナビは運行補助の目的で6~7年前にほぼ全車に導入した。そのまま書いて全車分の契約と受信料を請求されるのも...。かと言って嘘を書くのも気が引けるし...」と、扱いに困った様子だ。
 付近の物流会社にも同様の書面が送付されていた。ある会社では、「カーナビは搭載していないから記載しなかったが、社屋内の複数のテレビを記載し、手違いで提出してしまった」と話す。別の会社では、「国会審議や会計検査院などの文言を出して高圧的な文面。そして、本当のことも嘘も書けない嫌な感じの書面だった。返信義務もないだろうから放っている」とする。
 書面の趣旨などについて物流会社側から地域営業センターに問い合わせたところ、今月上旬にセンター管内にある1000を超える事業所あてに書面を送っていたとする回答を引き出したという会社もある。会社側によると地域営業センターの担当からは、「インターネット等を利用してランダムに書面を発送している」「カーナビに受信契約を求めていることに、『初耳だ』という人がほとんど」「カーナビの契約件数は分からない」などといった回答が返ってきたという。
 配送先の多様化や人材の流動化により、初めて運行する場所も特定できるカーナビを導入する物流会社は増えている。ある物流会社社長は、「カーナビに受信料を払えということが、社会的に通用しないと分かっているからNHKは契約件数を把握していない、もしくは把握できないと言っているのだろう。タクシーやバス、レンタカーなども含めて、自動車業界全体でそうした非常識な制度を辞めさせるべきだ」と話している。

ラジオの契約を流用

 NHKがカーナビに受信契約を求める根拠としているのは、放送法64条および同条で示される総務大臣が認可した「日本放送協会放送受信規約」だ。
 放送法64条は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に、NHKと受信契約を結ぶことを義務付けている。また受信規約2条では、「事業所等住居以外の場所に設置する受信機」について、「受信機の設置場所ごと」(いずれも2条2項)の契約を求め、設置場所の定義を「部屋、自動車またはこれらに準ずるもの」(2条4項)と定める。一般的概念で言えば、区切られた空間にテレビを置けば、契約義務が生じると読み取れるものだ。
 一方で放送法64条の但し書きには、「放送の受信を目的としない受信設備(中略)のみを設置した者について」は、契約義務の対象外とする。受信設備設置の目的、例えばテレビ付きカーナビでいえば「運行支援」だが、そうした目的を物流会社など自動車を大量に保有する業界関係者が、どこまで主張できるかが一つのポイントだろう。
 また、「カーナビが普及してから20年ほど経つにもかかわらず、受信料なんて聞いたことがない」といった常識を覆せるデータをNHKがどこまで出していくのかも焦点だ。NHK広報担当は本紙の取材に、カーナビやワンセグといった受信機種ごとの把握の必要性の話がNHK経営委員会等でも話題になることはあったとしながら、「今のところ、受信機種ごとの契約件数を出す予定はない」と話している。NHK広報担当によると、自動車内の受信機の契約義務を定めた受信規約2条4項は、昭和37年から設けられている。当時は、ラジオの受信契約を定めるために設けられたもので、カーナビ契約に準用されているものとしている。