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外装破損の責任は
2015年6月 1日号

外装破損の責任は

事業者負担が通例化も...

 商品事故による返品や再配送、弁済は、「事業者負担」が原則となっている。消費者意識の高まりに呼応する形で、外箱の小さな凹みや印刷が擦れただけでも返品対象となるなど、物流現場への要求は強まっている。そのため、ダンボール箱や袋、ビニールなどに傷を付けないためにかかる手間と時間、さらには荷受け側の厳しい対応が物流の非効率にまでつながっている現状がある。「外箱も商品」として、こうした外装破損の責任も事業者が負うことが通例化しているが、現場では、本来は商品を守るものであるはずの梱包材にまで責任を問われる状況を疑問視する声もある。

知られていない「約款11条」

 荷造りについて定められた標準貨物自動車運送約款の第11条には、「荷送人は貨物の性質、容積、運送距離及び運送の扱種別等に応じて運送に適するように荷造りをしなければならない」ことが明記され、外装に汚れや破損があったとしても、商品が無傷であれば事業者が責任を問われるものではないとされている。外装は商品を守るためのもので、外装が商品の場合には別途荷造りをするか、外装異常で受け取りを拒否された場合の損害を負担する責務が荷主にあることが示されている。
 しかし、現状では運送事業者が責任を負う貨物事故のうち、中身の商品に異常がない「外装異常」によるものが約3割(平成26年・全ト協調べ)に上っている。 
 「センターへの返品率は1日あたり0.04%」という生活雑貨メーカーの物流センター長は、「契約書を取り交わし、返品などのルールを明確化している」と話す。同センターでは、メーカーから入ってくる商品を検品する際、「明らかな凹みや傷があれば開梱せず受け取りを拒否する」。入ってきた商品については「構内で破損した場合は自社で買い取り」、発送後に破損した場合は「事業者が買い取ることになっている」と言い、全ての場合で「外装異常も破損として処理される」という。   
 同社では、「約款の内容は知らなかった」と言うが、契約書で責任の範囲と所在を明らかにして対応しているという。しかし、「入庫時に行う検品では、傷が何センチまでならいいなどといった具体的な決まりは設けにくく、現場の担当者によって判断にはばらつきがある」と、検品に個人差があることは否めないと指摘する。
 同様に、外装破損も商品事故として書面でルールを明確にしている荷主のもとで食品配送に携わる事業者(埼玉県)は、「発見した時点で荷物を持っていた者が弁償しなくてはならず、外装破損を隠して納品するなど責任の押し付け合いになっている」。工場から出荷された商品は、物流センターを経て店舗へと届けられるが、「入出庫の度に全てを検品する時間など現実にはない」。そんな中で外箱の傷を隠して出庫したり納品したりしているという。「店舗まで持っていっても受け取ってもらえず、再配達になるのは無駄でしかない」と同社社長は指摘するが、荷主に訴えても、「担当者は検品も仕事なのだから徹底すればよいと言うだけ」で、改善の糸口は見えない。

荷主との共通認識
一般消費者過剰な反応

 「結束バンドがダンボールに食い込んでいるだけで受け取ってもらえない荷主もある」と話す、埼玉県内で食品や雑貨の配送を手掛ける事業者は、「傷をつけないために時間を掛けて積み下ろしをしても、結束する際、すでにバンドがダンボールに食い込んでしまっている場合もあり、毎回受け取り拒否が発生している」という。湿気で外箱にしわができたり、印刷が擦れていたり、また、「持ち運ぶための取っ手の穴になるようにミシン目のついた箱も、それを使って手を入れて運べば間違いなく返品になる」というように、特別な取り決めがなくても、外装破損の責任を問われることが事業者の間では通例になっている。
 外装破損に関しては、本来、荷主にその責務があることが約款に明記されている。にもかかわらず、現場では外装破損への厳しいチェックと配送を請け負う事業者の責任が増大している。
 住宅設備機器メーカーの物流担当者は「現場納品で、施工業者が梱包を解いて設置するものが多く、中身に異常がなければ受け取りを拒否することはない」と話す一方、「外箱もエンドユーザーの目に触れる、手に渡るものほどチェックは厳しくなる」と指摘。その上で、「エンドユーザーの過敏な意識を変えることも必要」と続ける。
 事業者の間では、「荷受け先に約款を提示しても、何の役にも立たない」というあきらめの声もあるが、「一般消費者の過剰な反応を変えなければ解決にはつながらない」という点では、荷主、事業者ともに共通の認識があるのも事実。それだけに、物流関係者への約款第11条の周知を図るところからスタートし、そこから社会全体へ浸透させていくことが必要なのではないだろうか。