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物流効率化を阻む「大規模小売店舗立地法」
2014年11月 3日号

物流効率化を阻む「大規模小売店舗立地法」

無視できない住民の声

 郊外のショッピングモールでは、午前6時から1時間の間に荷物が集中し、荷待ちのトラックが列をなすという光景が繰り返されている。単純に考えれば、夜間・早朝にかけて納品時間を分散させれば問題は解決する。しかし、「大規模小売店舗立地法」という近隣住民の暮らしを保護する目的の法律によって、荷主による物流改善は制限せざるを得ない状況にある。輸送効率の向上を図り、ドライバーの負担を少しでも減らしたいと考える荷主も、一番の顧客である地域住民の声を無視できるはずもなく、理想と現実の間で揺れている。

 「道が空いている深夜・早朝に配送できればコストダウンになり、車を分散できるため運送事業者の負担も減らせるが、法律がネックとなり思うようにはいかない」と大型店舗の物流担当者は悩ましい現状を漏らす。運営する店舗の約6割は深夜・早朝に納品できない状態だという。

 同社では、生鮮食品などを買いに来る顧客のために、開店時間に余裕を持って納品する必要があるが、深夜・早朝にできないとなれば、必然的に午前6時から7時までの1時間で、すべての荷物をさばかなければならない。大型店舗への配送を担う事業者も「タイトな納品時間に着けなければならず、他社のトラックも集中するため、決してやりやすい仕事とは言えない」とこぼす。

 「大規模小売店舗立地法」とは、交通渋滞や騒音などから周辺地域の生活環境を守るため、店舗の設置者が配慮すべき施設の配置及び運営方法を定めたもので、「小売業を行うための店舗面積が1000平方mを超える大型店」が対象となっている。大型店の設置者は店舗を新設する際に、第5条1項に規定された形式要件に沿って申請書を作成し、都道府県または政令指定都市に届け出なければならない。

 届け出に明記する事項は、「店舗所在地」「店舗面積」などの基本情報のほか、「開店・閉店時刻」「駐車場の利用時間帯や出入り口の位置」など。荷さばきについても同様に、「施設の面積と位置」「時間帯」を申告する。これらは「許認可制ではないため、記載に虚偽がなければ基本的には受理される」(経産省商務情報政策局流通政策課)とし、夜間・早朝の配送についても例外でなく、「自治体が確認するのは、その事実を記載しているかどうか」(同)だという。

 「大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針(平成19年2月1日経産省告示16号)」に示された「計画的な搬出入」の項目には、「搬出入車両が一定時間に集中することを回避すること、周辺道路の混雑状況に照らして比較的余裕のある時間帯に搬出入を行うことなどについて必要な考慮を行うことが必要」とした上で、「騒音の発生について問題を生じないよう配慮することが必要である」と記載している。つまり、きちんと手順を踏めば、深夜・早朝の配送も不可能ではないということだ。
 それでも、「結果的に法律や地域の条例に阻まれているのが実情」と大型店舗の物流担当者はいう。物流効率化と運送事業者の負担軽減のため、すでに申請内容の変更に着手している同社だが、地域住民の理解を得るための事前調査が足かせとなっている。

 例えば、夜間・早朝の配送を行う場合、試験的に時間外の納品を行い、騒音の度合いを計測。これを地域の条例などに照らし、違反となる場合は防音壁を設置するなどの対策を講じる必要があるため、手間とお金、膨大な労力を投じなければならず、「申請条件はクリアしてもなかなか実行に移せない」というのが本音のようだ。

 自治体から住民へ変更の旨が周知されるのは、変更届の提出後2か月以内に開かれる説明会の場。これに基づき自治体は、地域住民の総意として意見を取りまとめる。「もし、ふさわしくない状況が発覚すると、都道府県および政令指定都市から勧告・公表される。それでも改善が見られない場合は意見の申し立てができるが、納得しなくても営業は続けられる。刑事罰はなく、罰金のみ」(同省商務情報政策局流通政策課)というが、いくら法律に強制力がなくとも、近隣住民の理解がなければ実現は難しい。

 最近では、後から建ったマンションの住民から苦情もあり、午後10時どころか、同8時までに納品を終えなければならなくなった店舗もあるという。それでも大型店舗の物流担当者は、「一番の顧客でもある地域住民の要望に応えていくという姿勢は変えられない」と話している。効率的かつ協力会社の負担が少ない配送の仕組みを整えようと取り組んでもなお、「交通渋滞や騒音などから地域環境を守ってほしい」という地域住民の声が行く手を阻む。決して避けては通れない課題だけに、荷主も頭を悩ませている。