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あいまいな弁済ルール
2013年12月 9日号

あいまいな弁済ルール

破損した商品は誰の責任か

 輸送につきものの商品事故。いま、その責任のほとんどを運送事業者が負わされている。一見、当然とも思われる配送時の事故に対する事業者の弁済。しかし、商品自体には何ら影響のない外箱の小さな歪みや、実際にはどこでついたか分からない傷も、最後に運んでいた事業者の責任となっているのが実情だ。弁済対象の基準は配送先の責任者によってまちまちで、多くの場合、事前の取り決めも行われていない。一方的とも取れる業界の「弁済ルール」は、果たして正当な取引といえるのだろうか。公正取引という視点から取材した。

 食品配送を手掛ける埼玉県の事業者は、「湿気で外箱がしなっただけでも弁済の対象。センターから出庫した時点で、前日運んだものより賞味期限が早いものが混じっていた場合でも、出発してしまったら責任はこちら。再配達になる」という。同じく埼玉県の事業者(家電、雑貨)は「運送保険はよく使う。バーコードでチェックしたら、そこから先の責任は全て事業者。ドライバーには積み込み時に傷や破損があれば必ず責任者に報告するように徹底しているが、狭い出庫口から一気に出されるとチェックすらできない」という。住宅設備の配送に携わる事業者(同県)は、「出庫時に傷がないか確認をさせられるが、細かいところまで見ている時間はない。腑に落ちないままクレームを言われ、ドライバーもストレスを感じている」と言い、加えて「メーカーの意向で簡易梱包になってからは四隅以外むき出しの状態の品物を運ぶことになり、傷を付けてしまう危険やドライバーの作業負担も増している」と話す。薬品配送をメーンとする事業者(同県)は、「積み込み業務はセンターの従業員の仕事だが、ドライバーが手伝うこともある。手伝うのはいいとしても、『おたくも積み込みをしているし、うちが積んだとしても、出るまでにチェックできるでしょ』と、荷崩れを起こして廃棄になった責任は全てドライバーに。ドライバーのモチベーションも下がるし、単価が高いので会社にとっても手痛い出費」と話す。

現場によって基準まちまち

 小売店などへの配送の場合、系列店であっても現場責任者によって弁済の基準はまちまちで、破損した商品だけ買い取りになる場合もあれば、1箱まるごと買い取りになる場合もあるという。事業者は、担当者によって異なる基準を受け入れるしかない。
 また、食品輸送を手掛ける事業者(同県)は、「壊れたものを見つけて報告すると、咎めるどころか感謝してくれる荷主も中にはあるが、コストが大きくなるせいか、大手になるほど他人に責任を負わせる仕組みのところが多い気もする」と言い、「気付いたことを感謝されるシステムなら発見も対処も早くなるが、ミスを隠して押し付けようとする体質ではむしろ効率が悪くなってしまった」と嘆く。

事前取り決め書面で契約を

 これら商品事故時の弁済について、事前に取り決めをしている事業者はほとんどなく、「書面で取り決めをした」という事業者も、「サインしなければ取引できなくなるため半強制的にするしかなかった」という。さらに、二次的な流通やそれに伴う事故を防ぐという名目で、「買い取り」でありながら、料金を支払うだけで品物が事業者の手に渡らない場合もある。「配送中の破損なら仕方ないが、どこでついたか分からない傷の責任まで負わされている。ドライバーも神経質になっているが、犯人を追及することもできない」と、泣き寝入りするしかないのが実情だ。
 こうした現状に対し、公正取引委員会は、「あくまでも一般論」とした上で、「優越的地位を利用して取引先に不利益を与えるような行為は、下請法や物流特殊指定で禁じられている。個別の状況を見ていないので断言はできないが、違法の可能性もゼロではない」との見解を示している。さらに、「当然想定される事態(商品事故)に関して事前に取り決めがなされていないことが驚き。契約が交わされていないにもかかわらず、全責任を負わされるようなことがあれば、俎上に載せられる可能性はある」とし、「まずは契約関係を明確に、書面にしていくことが大切」と話している。