第147回:バブルに溺れた経営(4)

 監禁15時間の恐怖をたっぷりと味わったFさんは、即座に夜逃げを決意した。翌日の夜、身の回りのモノだけを車に積んで、奥さんと13歳になる娘とともに、千葉県の友人を頼って逃げた。道々、さすがにヘッドライトのなかに涙がにじんだ。

 友人の世話でアパートを借りることはできたが、日々の生活は待ってくれない。Fさんはすぐさま新聞広告でさがしたアイデア商品の販売に乗り出した。歩合制で1か月1日の休みなしに働いても15万円程度にしかならなかった。

 これでは到底、生活を支えられない。わずか4か月で辞めざるを得なかった。

Fさんが次に始めたのは本の販売である。1冊3万6000円もする本で、1冊売ると1万円もらえる仕組みになっていた。

 が、その販売方法は政治家の名をかたって銀行や企業に売り込むもので、とてもまともな仕事とは思えなかった。Fさんはその仕事も1年足らずでやめた。

 その後も麻雀屋の店員、建設現場の下働き、ポルノビデオのチラシ配りと、生活を支えるために何でもやった。

 本当はまともな仕事、まともな会社に勤めたかったが、なにせ世はデフレ不況。新卒でも就職「冬の時代」だったのだから、51歳のFさんにまともな仕事など、あろうはずもなかった。

 それでも一家3人の生活は待ったなしである。何よりも辛かったのは、なに不自由なく育てた娘に、新しい服ひとつ買ってやれないことだった。

 そんなある日、リフォーム会社の営業社員募集の広告を見つけた。年齢は40歳までとなっていたが、Fさんはそこを熱意で押し切り、ついにまともな仕事にありついた。    

2007年12月 8日

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