第145回:バブルに溺れた経営(2)

やがてバブルがはじけた。

が、Fさんはその重大性に気付かなかった。
世の中が騒然となってもまだピンとこなかった。
それは、Fさんの経営感覚が鈍いからではない。

不況に突入すると、一時的にではあるが、Fさんの受注が増えるからである。

多くの会社が次々にテナント料の安いビル、オフィスに移転していくなかで、原状復帰工事(テナントが出ていくときのリフォーム工事)が増えるからである。

 このことが禍いし、Fさんの業績はガタッと落ちるのではなく、先月は悪かったが今月は持ち直したという具合に、一進一退を繰り返しながらジワジワと、真綿で首を絞められるように落ちていった。

それだけに気持ちのふんぎりがつかず、抜本的な対策も立てられぬまま、徐々に苦境へ追い込まれてゆく。

 しかし、平成5年頃になると、さすがにバブル崩壊の爪あとがはっきりしてきた。

どこの会社も景気が悪く、内装どころではない。
また、新築もリフォームも急速に冷え込み、受注はガタ落ち、工事量も激減した。

そして始まったのが業者間のサバイバル戦争である。

小さくなる一方のパイを奪い合うために、値引き競争、コスト競争が始まったのである。

しかし、それは当然ながら薄利受注、ヘタをすれば採算割れ受注へつながっていく。

 さすがに危機感をつのらせたFさんは、打開策として営業部門と工事部門を切り離し、営業部門を別会社としてスタッフを充実、受注活動に専念させた。

しかし、バブル不況は泥沼の状態で、すでにどうこうなる段階をすぎていた。

こうなると諸経費、とくに人件費が重く経営にのしかかる。

Fさんの資金繰りは日に日に苦しくなっていった。

毎日のように銀行へ足を運ぶが、いっこうに埒が明かない。すでに銀行の貸し渋りが始まっていたのである。

(つづく)

2007年11月07日

2007年11月 7日

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