物流ウィークリーヘッドライン
Nさんが放り込まれた寮は、タコ部屋も同然だった。それから2年余り、Nさんの幽囚生活が始まった。レストランだから食事には困らなかったが、むろん無給である。何よりも悔しかったのは、タコ部屋の住人たちが入れ替わり立ち替わり、「夜逃げ社長」をジロジロ覗きにくることだった。
Nさんが寝たふりをしていると、わざわざ電気を点け、「ほう、こいつが倒産夜逃げ屋か」と冷笑を浴びせていく。零落者は、とかくいじめの対象になりやすい。Nさんは悔し涙を呑んでそれに耐えるしかなかった。
そんな日々のなか、心臓を患っていたNさんの母親が亡くなった。が、知らせを受けても、夜逃げした身では葬式にも出られない。Nさんの身を案じつつ亡くなったという。その夜、Nさんは蒲団をかぶり、声を殺して泣いた。そして夜逃げしたことを心底悔いた。が、すべてはあとの祭りである。
不幸はさらに続く。子供たちが学校で「倒産父さん」と言っていじめられると、手紙で切々と訴えてくる。Nさんは心を掻きむしられるが、どうすることもできない。それどころか、あれほど仕送りすると約束しておきながら、いまだに1円の仕送りもできていない。無給の身では、いかんともなしがたいのである。
そんなNさんにある日、子供たちから絶縁状が届く。そこにはこう書かれてあった。
「お父さんは僕たちを捨てたから、僕たちもお父さんを捨てます。はじめからお父さんなんて、いなかったことにします」
Nさんはたどたどしい文字の手紙を握りしめ、へたりこんでしまった。そして運命を呪った。
すべては自分が播いたタネ、自分の夜逃げが招いた不幸と知りつつも、運命を呪うことによってしか心の平衡を保てなかったのである。
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