物流ウィークリーヘッドライン
Nさんは累が及ばないように母親を親戚に預け、奥さんとは離婚の形をとり、3人の子供とともに実家へ返した。そして夜行列車にとび乗った。最悪の選択である。
会社倒産はやむを得なかったとしても、家庭倒産の必要はまったくなかったし、夜逃げにいたっては論外である。Nさんの場合、自宅と200坪の工場用地を処分すれば、1億4、5000万円ぐらいにはなり、十分整理に耐えられたのである。が、それを彼の罪悪感が阻んだ。3重帳簿の悪事が露顕することを恐れたのである。
Nさんは九州へ逃げた。そこには大学時代の親友がいたからである。が、親友はポンと10万円ばかりを投げ出し、「付き合いは、これっきりにしてくれ」と、まるで厄介者扱い。学生時代は父親の経営がまだ順調だったこともあって、Nさんは小遣いに不自由しなかった。その小遣いで親友にも随分おごったし、面倒も見た。なのに厄介者扱いである。友情も何もあったものではない。
Nさんは落ち目の悲哀を噛みしめながら、九州に背を向け東京へ向かった。が、運の悪いことに、途中の大阪で債権者の1人に見つかってしまった。その債権者は東京と大阪でレストラン・チェーンを展開するオーナーで、Nさんは夜逃げの数日前、そのオーナーから300万円ばかり借りていたのである。
オーナーの怒りは尋常ではなかった。「倒産とわかっていながら、その寸前に借金をして夜逃げすれば、立派な詐欺罪だ。訴えてやる」と凄まじい剣幕である。Nさんは平謝りに謝り、しばらく待ってほしいと訴えた。と、オーナーが「それなら、うちの東京チェーンの寮に住み込んで、レストランの皿洗いをしながら借金を返せ」ということになり、Nさんは拉致も同然にオーナーともども東京へ向かった。
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