第130回:再起の群像 バブル崩壊の津波

 やがて、バブルがはじけた。Yさんの経営は平成3年の年商12億円をピークに下降していく。そして平成4年、晴天の霹靂が襲った。8000万円の不渡りをくらってしまったのである。Yさんは必死に金策に走り、子供の貯金までかき集め、その場はなんとか切り抜けたが、これで経営は完全に伸び切ってしまった。一度伸びたゴムはもはや元へ戻らない。

 いよいよバブル崩壊の津波が押し寄せ、受注が急減していく。Yさんは採算を度外視して受注獲得に走る。手形を振り出しているだけに、それを落としていかなければならないからである。

 しかし、それがかえって赤字を積み上げ、経営を圧迫していく。平成6年3月の本決算で9000万円の赤字、続く9月中間決算でも1億2000万円の赤字を出して万事休す。

 Yさんの倒産は平成7年1月である。負債総額7億2000万円。土地も自宅も工場も機械も、何もかも失って13年間の経営にピリオドを打った。

 結局、バブルがはじけようとはじけまいと、Yさんは倒産を免れなかったに違いない。経営は決断の連続だといっても、そこにはおのずと目標、計画がなければならない。それを忙しくなったから社員を増やす、というような場当たり経営では順境のときはともかく、逆境下では破綻をきたしかねない。

 Yさんにしても、もう少し先見性と計画性があれば、設備投資と自宅の新築を同時に行うような無謀は避けられたはずである。まして、仕事の量も決まっていないのに、見栄と体裁だけで大幅増員するなど、無茶としか言いようがない。

 場当たり経営は倒産のもとである。また、見栄と体裁は経営者の大敵である。Yさんの失敗はそのことを教えている。

2007年5月17日

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