第129回:再起の群像 見栄から出た借金

 Yさんは年々受注を伸ばし、創業5年目にして売り上げ5億円を達成した。社員も10人に増え、絶好調の経営が続く。

 一方、本業の利益を不動産投資にまわし、コツコツと土地も増やしていった。その土地がまた年々値上がりし、含みが急拡大していく。Yさんは周りに、「エンジニアというより不動産屋だねぇ」などと冷かされながらも、笑いが止まらなかった。

 その頃、日本経済はすでにバブルの真っ只中にあったが、笑いの止まらないYさんに、そんなことがわかるはずもない。Yさんは、好調な受注は自分にアイデアと営業力があるからだ、買った土地が値上がりするのは自分に先見の明があるからだ、と信じて疑わなかった。

 平成元年、Yさんは工場建設を思い立った。いつまでも外注頼みではなにかと思い通りにならないし、設計・組み立ての一貫体制を目指したのである。

 そこで、いままで投資してきた土地をすべて売却し、会社の近くに600坪の用地を購入、自前の工場を建設した。土地3億円、工場1億円の設備投資だったが、借入金は半分の2億円ですんだ。

 次は工場従業員の雇用である。Yさんは一気に20人を雇い入れた。会社の体裁を整えたいという見栄半分、外注費が浮くからやりくりできるだろうという思惑半分の雇用だった。が、Yさんの見栄はまだ続く。これだけの会社の社長が、みすぼらしい家に住んでいては恥ずかしい、とばかりに、1億3000万円の借金で豪邸を新築した。これでYさんの借金は3億3000万円、さすがに資金繰りが苦しくなっていく。

 それでも毎年1億円ずつ売り上げが伸びており、Yさんは自分の経営に何の不安も感じなかった。

2007年5月10日

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