物流ウィークリーヘッドライン
事実は小説よりも奇なり、という。倒産の悲劇は、まさにその「奇」の寄せ集めと言っていい。そしてその表情も千差万別である。
連鎖倒産を余儀なくされたUさんは、しばらく残務整理に忙殺された。そんなある日の夕方、債権者まわりでヘトヘトに疲れ果て、いったん帰宅した。と、家の中が足の踏み場もないほど荒らされている。その中に家族がへたり込んでいた。小学校に上がったばかりの娘が背中を丸めて泣いている。
数人の債権者がトラックで押しかけ、換金できそうなモノを根こそぎ持ち去ったという。その中には娘のピアノもあった。入学したら買ってやるとの約束で、ようやく手にした夢のピアノだった。買ってまだ1年も経っていない。そのピアノにしがみつき、「持っていかないで」と泣きじゃくる娘を邪険に突きとばし、強引に持ち去ったという。
もしや…とイヤな予感に襲われ、工場に駆けつけてみると案の定、新しい機械はもとより、その他の設備も在庫もことごとく持ち去られ、工場はもぬけの殻になっていた。言いようのない悔しさと絶望に襲われ、Uさんはその場にへたり込んだまま動けない。
どのくらい時が経ったろうか、やがてUさんの心にふつふつと怒りが煮えたぎってきた。いままで誠実に取引してきたではないか。すでに資産はすべて公開したではないか。なのにこの仕打ちはなんだ。こんなんで生きていられるか…真っ赤な怒りの塊が込み上げてくる。その塊に背中を押されるように、Uさんは車にとび乗って夜のヤミのなかへ突っ込んで行った。そして、とある私鉄の踏切に車を止め、エンジンを切った。
間もなく電車があの世へ運んでくれる。それで何もかもおしまい。楽になれる…Uさんの心には逡巡も恐怖もなかった。そして静かに目を閉じた。
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