第121回:夫の心得10か条 人生の最終目標は「幸福」と心得よ

 「逆境を乗り切る夫婦の心得20か条」のうち、「夫の心得10か条」の第10条は、「人生の最終目標は『幸福』と心得よ」である。

 かれこれ10年ばかり前のことである。その日、なにげなく3階の事務所から下を見ると、入り口のあたりを行ったり来たりしている夫婦がいる。私はすぐにピンときた。「お入りなさいよ」と声をかけたら、恐るおそる事務所へ入ってきた。

 聞くと、3日前に九州から夜逃げしてきて、昨日もその前日も入り口まではきたが、怖くて恥ずかしくて入れなかったという。その間、口にしたのは水だけ。昼は上野公園のベンチで、夜は公衆トイレの中で過ごしたという。昼近くだったので、私はさっそく出前を3つ頼んだ。夫婦は泣きながらカレーを食べていた。

 ご主人はスーパーを経営していたが、大手の進出と価格競争に敗れ、多額の借金を背負って自殺を決意。それを奥さんが止め、2人の子どもを親戚に預けて東京へ夜逃げ。そういう経緯だった。

 「倒産ぐらいで自殺なんか考えちゃいけませんよ。倒産は経営上の失敗であって、人生そのものの失敗じゃないでしょう。人生の目的は社長になることだけじゃありません。最終的に幸せになればいいんです。社長でなくたって幸せになる道はいくらでもあります。それをいまから話し合いましょう」

 私がそう言うと、夫婦からつきものでも落ちたか、それまで硬かった表情がいくぶんやわらいだ。

 私は2人を慰めるためにそう言ったのではない。この考え方こそ、私たち八起会の金科玉条だからである。倒産は経営者失格かもしれないが、人間失格ではない。幸福は多様である。そこへ向かって精進することが、八起会の標榜する「心の再起」である。ちなみに、八起会の会歌はズバリ「幸せさがし」である。

2004年12月31日

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